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楓:「さて、こちらの近況はもうよかろう。そろそろ事の詳細を話してもらおうか。まず、どのような経緯で、りんは兄殿の母上の養女になったのだ。それから、りんと兄殿の再会についてもな」
邪見:「あぁっ?うっ、うん、そっ、そうじゃったな。では、まず、りんが大雨で行方不明になった件からいくぞ。あれはな、豺牙(さいが)なる者が放った刺客のせいなんじゃ」
楓:「豺牙?」
邪見:「殺生丸さまの遠縁に連(つら)なる一族の者じゃ。豺牙は殺生丸さまの今は亡き父君、闘牙王さまの母方の従弟にあたる」
楓:「その豺牙なる者は、何故(なにゆえ)りんを亡き者にしようと画策した?」
邪見:「豺牙には由羅という娘がおってな。これが見た目といい年頃といい殺生丸さまと頃合いの姫だったんじゃ。あ~~もうっ!ここまで云えば解かるじゃろう。聡(さと)いお主のことだ。ほぼ察しがつこうが」
楓:「・・・りんが邪魔だったか」
邪見:「その通りじゃ。そもそも殺生丸さまには血の繋がる者、親族が極端に少なくてな。伯父君や伯母君もおらんし、当然、従兄弟(いとこ)連中もおらん。兄弟といえば犬夜叉のみ。おまけに奴は半妖で人界で暮らしておる。豺牙は御母堂さまを除けば西国において最も近しい血縁だったんじゃ。それをいいことに、奴め、殺生丸さまが西国を留守にされていた間、専横の限りをつくしておったらしい。税の水増しや勝手な特権行使など、それはもう色々とな。じゃが正当な主である殺生丸さまが帰国された以上、もう以前のように好き勝手な振る舞いは許されん。それどころか昔の行状を調べられでもしたら、即、身の破滅じゃ。殺生丸さまは潔癖な御方じゃからな。そんな状況の中、彼奴(きゃつ)は妙案を思いついたのよ。手っ取り早く己(おの)が窮地を脱する方法をな。それが殺生丸さまと自分の娘を娶(めあわ)せるという昔ながらの手法じゃ。姻戚関係さえ結んでしまえば多少の昔の悪さは目こぼししてもらえるだろうと古狸らしく算段したのよ。おまけに西国王の舅(しゅうと)ともなれば、その威光は大したもんじゃ。単なる一族の血縁などとは比べ物にならん。そう考えた豺牙は、早速、殺生丸さまの身辺を嗅ぎ回りはじめたんじゃろうな。すると必然的にこの村に預けられたりんの存在を知ることになる。奴の計画においてりんが最大の障害となるは必定。ならば排除すればよいと密かに人界に刺客を放った。これが三年前の大水の日のりん失踪の原因じゃ」
楓:「成る程。では、あの日、珊瑚からりんは蝶に誘われて川の方へ向かったと聞いたが、それは豺牙とやらが放った刺客のせいだったのだな」
邪見:「そうじゃ。刺客は蛾々(がが)という名の幻術を操る妖怪でな。そ奴は幻の蝶を使ってりんを誘い込み川に落としたんじゃ。大雨で堰(せき)が決壊し荒れ狂う川にな。溺死に見せかける積もりだったんじゃろうな。あの記録的な大雨じゃ。遺体があがる確率は低い。蛾々とやらが川にりんを落とす際、豺牙から絶対にりんに傷をつけんよう指示されておったらしい。それは、もしもじゃ、万が一、りんの亡骸(なきがら)が見つかったとしても、誰ぞの手にかかって殺されたと決して疑われんようにとの思惑からじゃろう」
楓:「何とまあ・・・奸智に長(た)けたやり口だ。まるで奈落のようではないか」
邪見:「ん? そうか。むぅ~~云われてみると確かにそうかも知れん」
※『陣中見舞い⑦』に続く