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トトトッと幼子が邪見の側を歩く。
黒髪に金色の瞳の男(お)の子。
犬夜叉とかごめの間に生まれた子供じゃ。
あ奴は半妖だが殺生丸さまと同じ父親をもつ弟、その犬夜叉の息子とはな。
となると殺生丸さまにとっては甥に当たる訳で。
ふむふむ、黒髪はかごめから金色の瞳は犬夜叉譲りっと。
犬夜叉のように犬耳ではないのだな。
見たところ瞳の色以外は里の者と変わらんようじゃ。
幼子の歩みは、到底、生後半年の赤子とは思えぬほど確かなものだった。
普通の人間の子ならば、まだハイハイが精々のはず。
それがハイハイどころか危なげなく歩いておるとは。
身体だって、生まれて半年の赤子とは思えぬほど大きい。
下手するとワシよりも大きいかもしれん。
やはり犬夜叉の半妖の血が影響してるんじゃろうな。
邪見は主の未来に思いをはせる。
もし、りんが殺生丸さまと・・・。
いやいや、りんと殺生丸さまの婚儀は仮定ではない。
もはや確定事項じゃ。
何といっても、あの御母堂さまの、西国の王太后であらせられる『狗姫(いぬき)の御方』の養女になったんじゃからのう。
それに西国王である殺生丸さままでついておる。
西国きっての実力者が親子揃って後ろ盾ときておる。
文字通り鉄壁の守護の布陣じゃのう。
どんなに内心、りんに不満があろうと表立って逆らうような愚か者はおらんじゃろうて。
つい先頃、豺牙一門を断罪したばかりだしな。
となると遅かれ早かれ、りんは殺生丸さまの子を孕(はら)むことになるわな。
はてさて、どんな子が生まれるんじゃろう?
犬夜叉のような犬耳の子じゃろうか?
りんに良く似た黒髪の子か?
それとも殺生丸さまに良く似た御子か?
邪見は、そんなことをツラツラ考えながら小さな足をセッセと運んだ。
すると程なく楓の家にたどり着いた。
入り口の筵(むしろ)を捲(めく)って家の中に入る。
コトコト・・グツグツ・・コトコト・・
囲炉裏にかけられた鍋が煮えている。
茸(きのこ)に食べられる野草、雑穀、それに猪の干し肉を加えて煮込んだ雑炊粥だ。
ジュルッ・・・ゴクッ!
その美味そうな匂いに思わず邪見は生唾を飲み込んだ。
唾液が口の中にあふれだす。
考えてみれば邪見は西国を出てから何も飲み食いしていない。
当然、ペコペコの空(す)きっ腹である。
腹の虫が鳴りそうなのをグッと腹に力をいれ必死でおさえる。
ううっ、殺生丸さまの壱の従者たる者がみっともない真似をする訳にはいかん!
すると楓が木の椀に雑炊をよそって手渡してくれた。
楓:「ほれ、邪見」
邪見:「うっ、うむ、馳走になる」
楓:「ほら、夜叉丸もな」
夜叉丸:「あい」
ズッ、ズズ~~ッ
早速、雑炊をかきこむ邪見。
むぅ、美味いっ!
う~~~空きっ腹だったせいか五臓六腑にしみわたるわい。
味噌が野趣にあふれた滋味をうまく引き出しておるのう。
そりゃ、西国の厨房で作られる贅(ぜい)をこらした料理には敵(かな)わんがな。
これはこれで中々におつな味じゃ。
夜叉丸も小さな口でフウフウと息をふきかけて雑炊を冷ましつつ美味しそうに啜(すす)っている。
邪見は夢中で一杯めをかきこみ、お代わり所望(しょもう)、二杯めを食べ終わって息をつく。
邪見:「ふぅ~~っ、馳走になった。田舎料理にしては中々いけるぞ、楓」
楓:「はっ、相変わらず口が減らんな、邪見」
邪見:「ふん、お前もまだ惚(ぼ)けてはおらんようだな」
楓と邪見がお馴染みの憎まれ口を叩いているところへ可愛い声が割り込んできた。
夜叉丸:「ばぁば」
夜叉丸だ。
椀の中の雑炊を食べ終わったらしい。
小さな手で椀を楓に差し出す。
楓:「おお、もうよいのか、夜叉丸」
夜叉丸:「ん」
邪見:「そういえば楓よ、犬夜叉達はどこにおるんじゃ?」
楓:「ああ、犬夜叉は法師殿と一緒に山向こうの村に出かけておる。年が明ける前に米蔵にとり憑いた化け狐を退治してくれと頼まれてな」
邪見:「かごめは?」
楓:「かごめは珊瑚と一緒に村の衆の餅つきを手伝っておる」
※『陣中見舞い⑥』に続く