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珊瑚の出産⑫



※この画像は『妖ノ恋』さまの了解を得て公開しております。


りんの話に邪見は得心した。
前々から不思議だと思ってはいたのだ。
どうして、かごめの姿が見えないのかと。
とはいっても、りんを楓に預けた後、邪見は主に従って西国に赴(おもむ)いた身。
人界にかかずらう余裕など全くなかった。
というか、ある訳がない。
ああ、もう黙っとれん!
口を出させてもらうぞ。


わしはな、殺生丸さまの国主就任に伴うあれやこれやの儀式やら折衝に追われ東奔西走する日々を送っておったんじゃ。
御母堂さまを始めとして西国の重役の方々への挨拶回りとか打ち合わせとか。
本当にもう目が回るような忙しさじゃったわ。
最近、やっと殺生丸さまの身辺が落ち着いてこられてな。
こんな風に、あれこれと詮索、あ、いや、思案する暇ができたのよ。
それでな、ふと気がついたんじゃ。
いつも犬夜叉にひっついとったかごめの姿を見かけん事に。


奈落が滅した後、突如、出現した冥道に呑み込まれたかごめ。
それを救おうと犬夜叉が冥道残月破を撃ち同じように冥道に潜り込んだのまでは覚えておる。
遠巻きに眺めておったからな。
ああっ? 断じて巻き添えにならんよう避難しとった訳ではないぞ。
わしゃ、阿吽を村外れに連れてっとったんじゃ。
何でかって?
あのな、村人が阿吽を見たら怖がるじゃろうが。
双頭の竜なんぞ見たこともない奴らばっかりじゃろうし。


まあいい、話を続けるぞ。
その後、犬夜叉とかごめがどうなったかは知らん。
わしとりんは殺生丸さまに従い、一旦、村から離れたからな。
そして三日後、再度、村を訪れた。
その時には消失したはずの骨喰いの井戸が元通りになっておったな。
あれには驚いた。
一体、どういう絡繰(からくり)かと訝(いぶか)しんだもんじゃ。


どもかく、犬夜叉は、あの胡散臭い井戸を通って村に戻ってきたらしい。
しかし、あの時はそれどころではなかった。
突然、殺生丸さまが、りんを楓に預けると仰(おお)せられてな。
わしゃ吃驚(びっくり)しとったんじゃ。
りんはりんで驚きつつも直ぐさま殺生丸さまに泣いて嫌だと訴えてな。
それは、もう大変だった。
あ~~ちょっとした愁嘆場じゃったな。
そりゃまあ、りんを手放すなんて殺生丸さまもよくよく思案なされた上での事じゃろうとは思う。
あんなにりんを大事にしておられたんじゃからな。
じゃが、りんにしてみれば殺生丸さまから見捨てられるようなもんじゃ。
そうそう簡単に納得はできんじゃろう。


思い返せば、殺生丸さまがりんを拾われた時、わしは単なる気紛れだと思うておった。
どうせ、その内、どこぞの村にでも捨て置かれるであろうとな。
ところがどっこい。
捨てるどころか、何度、りんが攫(さら)われようがキッチリしっかり取り戻してこられるわ。
世話こそわしに丸投げじゃが衣食住に不自由せぬようさり気なく配慮されるわと。
これまでの殺生丸さまからは考えられんくらい大事にされてのう。
御母堂さまにも訊かれたことがあるんじゃが、冗談抜きにりんは殺生丸さまの掌中の玉と云うてよかろう。
くうっ、従者のわしなんぞより、りんの方がよっぽど大切にされておったわい(涙)。
うっ、済まん、ちと取り乱してしもうた。


とっ、ともかくじゃ、殺生丸さまの話はりんにして見れば寝耳に水。
泣いて嫌だとごねるのも当然。
どうなることかとわしは案じておった。
するとな、信じられんことが起きたんじゃ。
殺生丸さまが、あの誰よりも誇り高き御方が、御母堂さまにさえ頭を下げられん御方が!
りんの前に膝を折られてな。
必ず逢いに来ると約束されたんじゃ。
もう驚愕を通り越して驚天動地(きょうてんどうち)じゃ。
わしゃ、もう、心底、魂消(たまげ)たぞ!


※殺生丸がりんを楓に預ける件(くだり)は当サイトの第58作『決断』をご覧ください。


※『珊瑚の出産⑬』に続く。





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