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※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。
雨で水嵩(みずかさ)が増した川を矢のように流れ下る何本もの太い丸太。
その内の一本が水面に出た『りん』の顔面に、イヤ、良く見たら左側頭部に直撃した。
アア~~~ッ!
ゆっくりと『りん』が水面に沈んでいく。
血がっ!『りん』の血じゃ!
水面に赤い色が散っておる。
毒蛾の蛾々は『りん』が完全に見えなくなってから翅(はね)を羽ばたかせ姿を消した。
そこで映像が消えた。
ブモォ~~~~~~~~~~~~~~~~~
凱風号が一声大きく嘶(いなな)いた。
これで終了だと云わんばかりに。
あんな事が『りん』の身に起きていたとは・・・。
ハッ、ということは御母堂さまは全て御存知だったのかっ!
それに『りん』は、今、何処に!?
殺生丸さまを見やれば激情に目は赤く染まり頬の妖線が太くなり始めている。
変化(へんげ)の前段階、半化け状態じゃ。
衝撃の事実に怖ろしいほど熱(いき)り立っておられる。
喰いしばった歯の間から漏れる息が荒い。
シュ~~~シュ~~~~~
息詰まるような雰囲気の中、御母堂さまが更に爆弾を落とされた。
『りん』襲撃の下手人、毒蛾の蛾々を衆目の前に引き出されたのじゃ。
篝火(かがりび)に照らし出される禍々(まがまが)しい原色に彩られた男。
つい先程まで見せられていた映像そのままに女のような優男(やさおとこ)だった。
口許は自害を封じるためだろうか。
猿轡(さるぐつわ)を噛まされている。
毒蛾の蛾々は下手人らしく縛妖縄(ばくようじょう)で縛(いまし)められていた。
【縛妖縄(ばくようじょう)】、その名が示す如く妖力を封じる縄じゃ。
あれで縛られておっては手も足もでん。
妖力そのものを縛る縄じゃからな。
尤(もっと)も、あの縛妖縄が利くのは、精々、並の妖怪までじゃ。
殺生丸さま程の大妖怪になると全く用を為(な)さん。
そもそも、あの御方を、お縄にする事自体、不可能じゃろう。
それ以前に爆砕牙で木っ端(こっぱ)微塵(みじん)に粉砕されるのが落ちじゃからな。
毒蛾の蛾々を見て殺生丸さまが爆砕牙に手を掛けられた。
即刻、斬り捨てるお積りだったのじゃろう。
だが、御母堂さまが止められた。
「待て、殺生丸」
如何な殺生丸さまとて母君には容易に逆らえん。
況(ま)して三年前の『りん失踪』の真実を暴いて下さったのは御母堂さまじゃ。
納得できないお気持ちのまま言葉を返される殺生丸さま。
「何故、止める、母上」
「刀を納めろ。そ奴には、まだ吐かせねばならん事があるのだ」
御母堂さまが先程から真っ青な顔の豺牙(さいが)に訊ねられた。
「豺牙よ、こ奴に見覚えはないか」
「とっ、とんでもございません、御方さま。何故、わしが、このような者を知っていると」
ムウッ、流石に古狸じゃ。
実に太々(ふてぶて)しいのう。
ここまで追い込まれながら尚も頑として自分の罪を認めようとせん。
「誓って、この者との関係はないと?」
「勿論でございますっ!」
考えてみれば嫌疑は毒蛾の蛾々が使った蝶にある。
同じ蝶を由羅が使ったが飽くまでも偶然だと白(しら)を切る積りなんじゃろう。
そうした豺牙の厚顔無恥な態度に御母堂さまが意を決されたらしい。
お庭番の頭領、権佐に命じて毒蛾の蛾々の猿轡を外させ直(じか)に尋問された。
蛾々の奴、豺牙に『りん』の襲撃を依頼されたことをスンナリと認めおったわ。
そりゃ、もう、聞いてるコッチが拍子抜けするくらいアッサリと。
すると豺牙めが怒るの何の。
今にも毒蛾の蛾々に掴みかかりそうな勢いじゃった。
御母堂さまに命じられたお庭番の頭領、権佐殿に押さえ付けられたがの。
まあ、豺牙にしてみれば無理もないか。
ここで『りん』襲撃を企(たくら)んだ黒幕とバレたら身の破滅じゃもんな。
そこへ更に駄目押しの一手が。
権佐配下のお庭番が【動かぬ証拠】を持ってやって来たんじゃ。
小さな包みから出てきたのは“紅白の飾り紐”。
『りん』の髪紐じゃ。
あの時、毒蛾の蛾々の手に落ちた・・・。
御母堂さまが、それを蛾々に確認された。
何でも豺牙の屋敷から持ち出してきたらしい。
それを聞いた豺牙めが、俄然、調子づいて喚き出しおった。
髪紐は自分の娘、由羅の物だと主張してな。
何が何でも自分は無実だと表明する気じゃ。
どこまでも厚かましい。
するとな、豺牙の娘の由羅までもが『りん』の髪紐を自分の物だと答えおった。
全く躊躇(ためら)いもせずシャアシャアとな。
クゥッ、何と面憎(つらにく)い女子(おなご)じゃ。
恐れ多くも西国王と王母の前で堂々と嘘をつきおった。
やはり親が親なら子も子だな。
信じがたい面の皮の厚さじゃ。
だが、天は、イヤ、御母堂さまはそれを許さなかった。
由羅に髪紐が自分の物ならば、それで髪を結うてみよと申されたのだ。
その後、どうなったかじゃと?
フフン、結果を知ってる者は殆どおらんじゃろうからワシが説明してやろう。
殺生丸さまはな、予(あらかじ)め盗難を見越して、これまで『りん』に贈ったもの全てに“呪(しゅ)”を掛けておかれた。
それはな、もし、正統なる持ち主、『りん』以外の誰かが、それを使用した場合、途轍もない衝撃を受けるという“呪(しゅ)”なのじゃ。
ここまで言えば、もう判るじゃろう。
由羅めが、その後どうなったかが。
そうじゃ、凄まじい絶叫を上げて倒れたのじゃ。
※『邪見の僕(しもべ)日記⑨』に続く