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『邪見の僕(しもべ)日記⑦』



※上の画像は『妖ノ恋』さまの使用許可を頂いてます。

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毒蛾の蛾々、奴こそ豺牙に雇われ、直接、『りん』に手を下した張本人じゃ。
豪雨の中、突然、『りん』の前に現われた見るからに怪しい妖怪。
最初、奴を見たワシは、てっきり女だと思ったもんじゃ。
何しろ女のような顔に派手な原色の化粧を施しておったからな。
それに体付きも男にしては割とホッソリしておった。
しかしだ、よくよく見ると女にあるはずのない喉仏があるし、結構、背も高い。
所謂(いわゆる)女顔の男って奴じゃな。
それにしても、あ奴、誰かに似ておる。
ン~~~誰じゃったかな?
オオッ、そうじゃ、思い出したぞ、あの男じゃっ!
白霊山で身の程知らずにも殺生丸さまに挑(いど)んできた、あの女男。
蛇のようにクネクネと動く妙な刀を操っておった輩(やから)、奈落の手先!
名前は、え~~っと、確か、りんが教えてくれたよな。
じゃ、じゃ、じゃ、蛇骨じゃ!
尤(もっと)も、あいつは妖怪ではなく人間だったがな。
だが、考えようによっては妖怪よりも性質(たち)が悪いかもしれん。
何しろ、あ奴は人間は人間でも死人(しびと)じゃったからな。
殺生丸さまが沁(し)み付いた臭いで判ると云っておられたわ。
ンッ、意味が分からんとな?
それでは噛み砕いて説明してやろう。
殺生丸さまの本性が犬妖怪であることは知っておるな。
当然、嗅覚が怖ろしく鋭い。
何しろ本性が『犬』じゃからな。
その殺生丸さまが、あ奴から死人(しびと)特有の骨と墓土の臭いを嗅(か)ぎ取られたのじゃ。
蛇骨は生身の人間、生者(せいじゃ)ではなかったのだ。
とっくの昔に死んで墓に葬られた死者。
肉体は腐り落ち骨だけになった骸(むくろ)。
つまり、あの世の者、即ち亡者だったのじゃ。
そんな亡者どもを、奈落の奴め、四魂の欠片を使って七人も甦らせおった。
死者でありながら肉を纏い墓から甦った者、本来あるべきではない存在、これを『死人(しびと)』と呼ぶ。
蛇骨はな、その七人の内の一人なんじゃ。
甦った死人(しびと)どもは生前は戦になると雇われて戦う凄腕の傭兵集団だったそうな。
いつも七人の仲間で行動することから何時しか『七人隊』と呼ばれるようになったらしい。
その戦いぶりは苛烈にして残虐、女子供にも容赦しなかったそうじゃ。
怖ろしく強かったらしいぞ。
何でも七人で百人分の働きだったとか
だが、その強さが仇(あだ)になった。
余りの強さと残虐性に雇い主が恐怖を抱いたのじゃ。
結果、七人隊は大軍に取り囲まれ討ち取られた。
そんな奴らが十数年ぶりに四魂の欠片によって甦ったのじゃ。
元々、奴らは人間だから妖気がない。
それこそが奈落の狙い目じゃった。
聖域の結界は妖気にのみ反応するからの。
だから、奴らは白霊山の結界に全く影響されず自由に出入りできた。
妖怪は聖域に近付くだけで浄化されてしまうからな。
事実、ワシなど危うく消滅しかけたんじゃ。
ウ~~~思い出しただけでゾッとする。
とにかく殺生丸さまでさえ迂闊(うかつ)に近付けんような場所だったんじゃ。
そんな、おっかない結界に守られた白霊山。
奈落は、そんな白霊山の中に隠れ潜み、これまでにない大幅な体の組み換えを行っておった。
そして、犬夜叉達に邪魔されんよう七人隊を甦らせ白霊山に近づけないよう守りに付かせておったんじゃ。
思い出すのう、りんを連れて旅をしていた頃を。
アアッ、まっ、また、話が逸(そ)れてしもうた。
今は、昔話をしておる場合ではない。
『りん』を襲った下手人の話をしておるんじゃ。
それでな、土砂降りの雨の中、毒蛾の蛾々は手にした鞭で『りん』に襲い掛かったんじゃ。
クネクネと蛇のようにしなる鞭。
クゥ~~奴は得物まで蛇骨と似ておる。
鞭に翻弄され逃げ惑う『りん』。
雨は、益々、激しさを増し側を流れる川は、ドンドン、川幅を拡げていく。
何時の間にか、『りん』は川の縁(ふち)へと追い詰められておった。
最初から、あ奴は『りん』を川の方へ誘導する積りだったんじゃろうな。
そして大きく振りかぶったと思いきや、『りん』の右側頭部を狙って鞭打った。
ビシッと鳴る鞭の音が聞こえるような気さえしたわ。
狙いは過(あやま)たず『りん』の紅白の髪紐に当たった。
反動で川に投げ出される『りん』。
紅白の髪紐がちぎれ空中に放物線を描いて毒蛾の蛾々の手に落ちてくる。
『りん』は水飛沫(みずしぶき)を上げて川に落ちた。
イカン!『りん』は泳げないんじゃっ!
必死に水をかき頭を水面に出した『りん』。
そこへ上流から流れてきた丸太が襲いかかる。
 

「「りんっ!」」
 

ワシも殺生丸さまも同時に『りん』の名を呼んでおった。


※『邪見の僕(しもべ)日記⑧』に続く
 

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