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『邪見の僕(しもべ)日記④』

お仕置き主従

大変、お待たせしました。
暫(しば)らく潜る日々が続き投稿が遅れました。
謹んでお詫び申し上げます。
以下が新作です。


方斎が告げた占断、それは驚くべきものじゃった。
『りん』が生きていて、然(しか)も、然(しか)もじゃぞ、近い内に戻ってくるというんじゃ。
ワシも驚いたが、殺生丸さまは、もっと衝撃を受けられたことは間違いない。
その朗報を聞くや否や驚くべき変貌を遂げられたからな。
まず殺生丸さまが、どう変わられたかというとだな。
占断を聞いた以上、もう方斎宅に長居は無用とばかりに寝転がっていたワシを蹴飛ばされたんじゃ!
いいか、蹴飛ばされたんじゃぞ。
それまでの殺生丸さまは何をするにも億劫(おっくう)そうでな。
やる気というか気力そのものがゴッソリ抜け落ちておったんじゃ。
当然、ここ二年間、ワシへのお仕置きは皆無。
それ以前は何かというと些細な咎(とが)で、あっ、いやいや、これと云って何もなくてもワシを折檻する御方だったんじゃ。
痛い思いをせずに済むのは正直な話、有難くはあったが、ワシャ、それ以上に殺生丸さまの無気力が辛くってな。
八つ当たりでも気晴らしでも、とにかく何でも構わんから以前のようにお仕置きされたいと願っておったのじゃ。
それが、どうじゃ、この二年の間、強まるばかりだった退廃的な雰囲気が、嘘のように綺麗に払拭(ふっしょく)されておるではないか。
物憂げだった目には鷹のような炯炯(けいけい)たる輝きが戻り幽鬼のようだった四肢には精気が漲(みなぎ)っての。
クゥ~~~~久々に目が覚めるような活力に満ちた御姿を拝見できたのじゃ。
『りん』が失踪する前の殺生丸さまが復活されたんじゃ。
ワシャ、嬉しくて嬉しくて・・・グスン、(涙)、ズズッ、ズビ~~~ッ!(鼻水)
それからというもの、殺生丸さまは西国王としての執務に励まれての、尚且つ『りん』の探索も再開された。
後は、何時、『りん』が現われるのかと心待ちにしておられたんじゃが。
これが待てども待てども、ち~~~~っとも現われん。
半年を過ぎたあたりじゃったかな。
殺生丸さまが待ち切れなくなったのか、又も荒れ始めてな。
今度は前回のように気力が抜け落ちる風ではない。
寧ろ、『苛立つ』と表現するのがピッタリかな。
日毎にイライラが蓄積して鬱屈が溜まっていって・・・もう何というか。
ア~~~あのピリピリした今にも放電しそうな雰囲気には、ワシャ、ホトホト参っておった。
そんな時に催されたのが紅葉の宴だったんじゃ。
まさか、あの宴に、『りん』が来ているなどと誰が想像しようか。
それもな、りんの奴、養女として御母堂さまに連れられて来ておったんじゃぞ。
もう、驚いたの何の、恐れ入りやの鬼子母神じゃな。
まさか、あの、御母堂さまが、豺牙の差し向けた刺客に襲われた『りん』を保護して下さっていたとは・・・。
正直、全く、思い付きもせなんだ。
それが判明したのが紅葉の宴での事じゃったんじゃ。
二百年ぶりに西国に帰還された殺生丸さまが国主の座に就かれて、かれこれ三年が経つ。
何時までも妻妾を娶ろうとなさらぬ殺生丸さまに業を煮やした豺牙を始めとする古狸どもがな、音頭を取って盛大に開催されたのが紅葉の宴なんじゃ。
紅葉の宴と銘打ったものの、ありゃ、体(てい)の良い見合いの席じゃったな。
いやいや、豺牙の家中の者にしてみれば、事実上の殺生丸さまと豺牙の娘との婚儀の積りだったんじゃろう。
何てったって豺牙は殺生丸さまの妃の地位を虎視眈々と狙っている古狸どもの筆頭じゃったからな。
そうした心積もりのせいか、宴の準備も、えらく豪華で気合いが入っておったしな。
豺牙の娘、由羅なんぞ花嫁衣裳と見紛う白無垢を着ておったぞ。
いやいや、あれは、誰が見ても花嫁衣裳にしか見えなんだ。
おまけに、通常なら国主の殺生丸さま御独りが上座になるはずの席が対(つい)で用意されておったんじゃ。
対の座布団じゃぞ、あれでは、まるで花婿と花嫁の席次ではないか。
勿論、殺生丸さまは、それを一目で見抜かれたし、重臣の尾洲さま、万丈さま、側近の木賊(とくさ)殿、藍生(あいおい)殿、女官長の相模さまも一様に不快な表情を示しておられた。
聡(さと)い殺生丸さまが豺牙のあざとい企(たくら)みにホイホイ乗っかるとは思えんかった。
さりとて、あからさまに断っては角が立つ。
わしゃ、どうなることかと、内心、ヒヤヒヤしておったわ。
そうしたらな、そこへ、折りよく御母堂さまが乗り込んできて下さってな。
もう、『地獄に仏』とはこの事、仲良く親子が並んで座って事なきを得たんじゃ。



※『邪見の僕(しもべ)日記⑤』に続く


 

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