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『珊瑚の出産⑭』


※この画像は『妖ノ恋』さまからお借りしてます。

りん:「かごめさま、もう戻ってこないのかな?」
りんが心配そうに呟(つぶや)く。
殺生丸さまに拾われる前、あんなに人間どもに酷い目に遭わされておったのに。
相変わらず心根の優しい奴じゃのう。
わしゃ、あ~んな口煩い女のことなど気にもならんがな。
寧(むし)ろ、清々するわい。
んっ? そういえば、りんは神楽も助けてやろうとしたことがあったな。
え~~と何時のことじゃったろうか?
ポン!(手を打つ音)
おお、そうじゃ、そうじゃ、思い出したぞ。
あれは殺生丸さまが奈落の心臓のありかを探っておられた頃のことじゃ。
以前、あの世とこの世の境にある父君の墓所で殺生丸さまが奈落と戦われたことがあったじゃろう。
おまけで犬夜叉達もおったがな。
あの時、殺生丸さまはある事に気付かれたのじゃ。
何故、奈落は身体を粉々に砕いても死なないのか?と。
そして、ある考えに辿(たど)り着かれたのじゃ。
彼奴(きゃつ)は何処(どこ)ぞに心臓を隠しておるのではないかと。
確かに、そう考えれば奴の『不死』も合点がいくわな。
事実、それを裏付けるかのように奈落の分身である神楽は胸を打(ぶ)ち抜かれても死ななかった。
あ、何で、そんな事を知ってるのか?じゃと。
実際にこの目で見たからじゃよ。
あの女、わしらの目の前で川にぶち落ちよった。
どうやら気を失っておったようでな。
いつもと様子が違っておったわ。
あのまま捨て置けば流されて土左衛門になりそうな勢いじゃったな。
殺生丸さまは「放っておけ」と仰(おっしゃ)ったんじゃが。
りんが神楽を助けようと川に入ってな。
足を滑らせ溺れかけたんじゃ。
わしゃ「これはいかん」と、すぐさま人頭杖を差し出して助けようとした。
じゃが、川底は思ったよりツルツルでな。
わしまでもが足を滑らせ溺れかける始末。
結局、殺生丸さまに助けていただく仕儀となった。
いやはや全くもって面目ない。
主の手を煩(わずら)わせるとは従者にあるまじき体(てい)たらくじゃ。
それにしても豪(えら)い目にあったわい。
浅瀬じゃからと甘く見たのが間違いであった。
お陰で殺生丸さまから拳骨を頂戴してのう。
特大のたん瘤(こぶ)をこさえる羽目になってしもうた。
ううっ、痛かったぞ!
ゴホッ、とっ、とりあえず話を戻す。
阿吽が川から、まず、わしとりんを助け、それから神楽を引き揚げてくれたんじゃ。
んっ、殺生丸さまじゃないのかって?
馬鹿者、なんと畏(おそ)れ多いことを、そんな訳あるかっ!
神楽のような下賤の女、助けてやっただけでも御(おん)の字じゃわ。
それでな、引き揚げたのはいいんじゃが、あ奴、胸の真ん中にデッカイ風穴が開いておったのよ。
本来なら心臓がある場所、つまり、即刻、絶命してもおかしくないほどの致命傷じゃった。
なのに見る見るうちに傷口がふさがっていってな。
そこへ浮かび上がる不気味な蜘蛛のような痣(あざ)。
イヤ~~魂消(たまげ)た。
なんとも面妖な出来事であったわ。

※『珊瑚の出産⑮』に続く


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